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東京地方裁判所 平成6年(レ)259号 判決

控訴人

安田ローン総合サービス株式会社

右代表者代表取締役

濱田實

右訴訟代理人弁護士

大嶋格

被控訴人

岸本公雄

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

1  被控訴人は、控訴人に対し、金二一万八四三九円を支払え。

2  控訴人のその余の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを五分し、その一を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。

三  この判決は、第一項1に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  控訴の趣旨

一  原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。

二  被控訴人は、控訴人に対し、金二〇万九〇五八円及びこれに対する平成六年九月二三日から支払済みまで年一四パーセントの割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は、第一審、第二審とも被控訴人の負担とする。

四  仮執行宣言

第二  当事者の主張

一  控訴人の請求原因及び被控訴人の認否並びに証拠関係は、原判決摘示及び当審証拠関係目録記載のとおりであるから、それぞれこれらを引用する。

二  控訴人は、連帯保証人の事前求償権の行使として、被控訴人の訴外会社に対して負担する借入金債務である残元金二〇万九〇五八円及びこれに対する期限の利益喪失後である平成六年九月二三日から支払済みまで約定の年一四パーセントの割合による遅延損害金を請求しているものであるところ、原判決は、求償し得る遅延損害金の範囲は、残元金に対する平成六年九月二三日から原審の口頭弁論終結時である同年一〇月三日までの限度に限られる旨判示するが、原判決の右付帯請求に関する解釈には誤りがある。

理由

一  請求原因事実は、すべて当事者間に争いがない。

二 受託保証人のいわゆる事前求償権は、主たる債務が弁済期にあるときに、受託保証人が債権者からの履行請求を受けるおそれが多いことから、受託保証人が代位弁済等をすることにより現実に金銭の支払をする以前に、予め主たる債務者に対して求償することにより、受託保証人を保護しようとするものであるから、受託保証人が代位弁済をした場合の事後求償権とは自ずからその法的性格を異にすることは明らかである。そうであるとすれば、受託保証人が事前求償し得る額は、受託保証人が求償の当時において、受託保証人が負担すべき範囲内の額について求償することができるというべきであり、本件において、控訴人が主張するところの主たる債務の元本に対する遅延損害金は、事実審の口頭弁論終結の日までに既に発生した分に限って請求することができるにとどまると解するのが相当である。

したがって、控訴人は、本件において、主たる債務の残元金二〇万九〇五八円及びこれに対する主たる債務者の期限の利益喪失後である平成六年九月二三日から当審口頭弁論終結の日である平成七年一月一七日まで年一四パーセントの割合による遅延損害金九三八一円の支払を求めることができるにとどまる。

三  よって、以上と異なる原判決を主文記載のとおり変更することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条、九六条を、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 星野雅紀 裁判官 金子順一 裁判官 増永謙一郎)

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